2017年1月21日土曜日

民法と労働法の関係

労働者と使用者との間で合意される労働契約は私人間の私法的関係です(国と私人の関係を規律する公法に対置される)。そして、私法的関係を一般的に規律しているのが民法です。

民法は、契約当事者は対等な立場にあるとの前提に立つため契約自由の原則によって支配されます。現実的には力関係や交渉力に差があるという現実を踏まえたうえで、契約自由の原則に一定の修正を加えて制限を加え、さらに力関係の差を労働組合の交渉力で補うことによって契約の自由に修正を加えているのが労働法です。私法の一般法である民法に対し、労働法はその特別法です。労働法に規定がある部分は労働法が優先適用され、そうでない部分は民法が適用されます。

民法と労働法の関係は、一般法と特別法の関係にあり、まずは特別法が優先して適用されますが、労働法は、労働者と使用者の労働契約関係全体をカバーしていません。その部分は、民法が適用されるのです。それに、労働契約関係で用いられる概念は、民法の概念が基になっています。さらに、労働法による民法の原理の修正をする場合にも、民法の枠組みが残されていることがあります。

例えば、民法の規定があてこれに反する労働法の規定がある場合、労働法の規定が優先して適用されます。逆に、民法の規定があってこれに反する労働法の規定がない場合、民法の規定が適用されます。また、民法の規定と労働法の規定があって双方が矛盾しない場合、双方が適用されます。

このように、労働法に規定がない事象については民法に立ち戻る必要があり、労働法に規定がある事象であっても民法との関係を考察することが大切です。

2015年6月21日日曜日

変則完全週休2日制

通常、企業に勤めている人にとって、完全週休2日制とは毎週土曜日と日曜日が休みであることとして受け止められています。しかし、どの曜日を休みとするかは企業次第です。

例えば、毎週日曜日と水曜日を休みとする完全週休2日制も可能です。月曜日・火曜日の2日働けば休み、木曜日・金曜日・土曜日の3日働けば休み。肉体的にも精神的にも負担が少ないリズムかもしれません。日曜日は休日が重なる家族や友人と過ごす日。水曜日は買い物に出かけたり、美容室に行ったり、土日は予約すら取れない人気レストランで食事をしたり、役所で手続をしたり、病院で診察を受けたり。どこも空いていて快適でしょう。土曜日は出勤しますが、お客さま・クライアント・取引先などからの電話やメールはほとんどないので仕事がはかどります。

または、毎週水曜日と木曜日を休みとする完全週休2日制も考えられます。ホテルや旅館も空いているでしょうから、一泊での遠出も快適です。旅先の観光場所や食事処も空いていることでしょう。土曜日と日曜日は出勤しますが、通勤電車は空いていて快適です。集中して優先度の高い仕事に打ち込むことができます。

このように、1週間のうち土日の2日以外が完全に休みとなっている制度を、完全週休2日制と混同しないために、ここでは「変則完全週休2日制」と呼ぶことにします。

変則完全週休2日制が世の中に普及すると、この制度を採用する企業の従業員は、1週間のうち休みとしたい曜日を2日選択し希望を出せるようになるかもしれません。

私鉄会社に勤務する典弘さんは毎週日曜日と月曜日が休み。化粧品会社に勤務するあゆ美さんは毎週火曜日と水曜日が休み。大学のゼミで2年間を共に過ごした二人。典弘さんは告白することが出来ないまま卒業を迎え、2人は社会人になりました。休日が合わない二人ですが、仕事後にゼミ仲間を交えて食事をしたり飲みに行ったりしていました。そんなある日のこと。

典弘:あのさ、俺、休日を変えようと思ってるんだ。
あゆ美:会社で何かあったの?

典弘:いやさ、火水を休みに出来るように会社に希望を出そうと思うんだ。
あゆ美:(私と同じ…?)えっ!?

典弘:そういうこと。
あゆ美:うん、いいよ。

変則完全週休2日制が普及すると、こんな告白が普通になる日が来るかもしれません。ワークスタイル変革は、恋愛のスタイルを変革するかもしれないですね。

2015年6月10日水曜日

ディーセント・ワーク

International Labour Organization (ILO) は1919年に設立された国際機関で、労働条件の改善を通じて、社会正義を基礎とする世界の恒久平和の確立に寄与することや、完全雇用・労使協調・社会保障等の推進を目的としています。政府・労働者・使用者の三者で構成され、スイスのジュネーブに本部を置いています。

日本は、ILOが誕生した1919年からの原加盟国で、ILO通常予算に対する拠出はアメリカに次ぐ2位です。駐日事務所は1924年に業務を開始し、ディーセント・ワークを始めとしたILOの取組みを広く国民に普及するため、活動を展開しています。

ディーセント・ワーク」とは、「働きがいのある人間らしい仕事」と意訳され、4つの精神を含んでいます。

雇用の創出
世界中のほとんどの人は働くことで収入を得て生活をし、働くことで人としての尊厳を保っています。ところが、世界には2億人以上の失業者がいます。仕事があっても1日2ドル以下の収入で貧しい生活を強いられている人が10億人以上います。ただ雇用を増やすだけではなく、質と量の双方を備えた雇用を創出することが大切です。

社会的保護の拡充
怪我や病気をしたり、職を失ったり、老齢のため働くことが困難になることは、人ならば誰しもが遭遇します。だからこそ安心して働ける社会的な仕組みが必要です。なのに、世界の人口の8割近くが十分な社会的保護を受けられずに暮らしています。公的な医療保険・年金制度・失業保険・労災保険などの社会保障を世界に広げることが大切です。

働く人の権利を守ること
女性や障害のある方などが差別されない職場をつくること、子供が酷使されない環境をつくること、労働組合の団体交渉を通じて働く人の権利を守ること、はすべて働く人の尊厳を守るために大切です。

社会対話の促進
風通しの良い対話ができる職場では高いモチベーションが維持され、生産性が向上します。職場の課題や紛争を平和的に解決できるよう正労使の話し合いを進めることはとても大切です。

私たちは、ディーセント・ワークに取組む中小企業を支援しています。